きみのペット
唐突だが、ペットを飼い始めた。
ちょっとやんちゃで、悪戯好きで、それでもとびきり可愛くて、人懐っこくて、甘えん坊なヤツ。
「おかえりー」
政宗遅いからさぁ。
出迎えた元親の言葉の続きは、簡単に察する事が出来た。キッチンからは異様な匂いが立ちこめている。
「ご飯でも準備して待ってようと思ったんだけど、ゴメン、大失敗」
ちらりと惨劇の場を見やり、これまた派手にやったもんだ、といくらか感心の意味で息をつけば、元親はへなりとしょげた。悪いことをしたとは思っているらしい。ならば、と政宗はうつむき加減の額を弾く。甘んじてそれを受けた元親は短く呻き、うっすら涙を浮かべた。
「いってー!」
「今日は遅くなるから適当に何か頼んでおけって言ったろ?いつもの場所に金も置いてある」
「それじゃ意味がないんだっての」
わからねーかなーこの気持ち!
わざとらしく拗ねてみせる姿に、政宗は笑みを噛みしめた。
元親の頭を撫で回し、機嫌取りを試みるがそれよりも早く抱きつかれる。激務で疲れた政宗の身体に生身の温かさと重さは心地良く、離れがたい。ワイシャツに皺が寄るのも気にせず、その場へ腰を下ろし抱き締め返した。
「でも、もう帰ってきたならいっかな」
元親が深く息を吸い、満足げに吐き出す。毛先が痛んだ髪を解してやりながら、政宗は露わな首元へ唇を落とした。
「なぁ、元親。シャンプーしてやろうか?」
「そう言いながら、もう脱がしてるのな」
「どうせ裸になるんだ。今脱いでも後で脱いでも、同じだろ」
ペットを飼ってる人には寂しがりが多いらしい。
長い間、呼吸で忙しなく喘ぐ元親の喉はとっくにからからだった。二人分の汗と白濁が混じった液体はさらさらと、腿と伝ってフローリングへと流れる。きれい好きな元親の“ご主人様”は食事でものを溢すと五月蠅いくせに、こういう汚れには驚くほど寛容だ。
上下する彼の旋毛を見下ろし、その動きに合わせて開いた股の内側を擽る髪の毛に欲が膨らむのを感じて、元親はひくっと喉を引きつらせた。
「足りないっ…もっと…!」
「ペットのくせに。主人に命令すんのか」
「ちが、っう」
真っ赤な舌先で執拗に出口を弄くられ、熱い吐息を薄い皮膚に感じれば、抵抗する間もなく吐き出してしまった。床に背をつけ、ぜえぜえと息つく脱力した自身の姿を、政宗は濡れた唇を持ち上げて見下ろす。
こうやって余裕に顔を歪ませる表情が、一番好きだ。涙の膜越しに視線を合わせて、元親は思う。
ろくに慣らしもせず、強引に侵入してきた熱が身体の内側を無遠慮に擦った。反射で反った元親の背を、程良く鍛えられた腕が支える。さらけ出した喉元に政宗が顔を埋めると、固く尖った何かが触れた後、ちくり、と微かに痛んだ。おそらく、鬱血した痕が残るだろう。
“ご主人”である政宗は、機会を見つけては元親の首回りに印を残すことに御執心らしかった。満足した表情で、痕をなぞり上げる。
まるで首輪みたいだ。
元親は、ぼんやりと考えたが、それもいずれ駆け上がる快感にぼかされてしまった。
耳朶を犯す、腸を掻き混ぜる音に混じって自身の掠れた声が零れる。零れれば零れるほど、目の前の顔の笑みは深くなっていった。微笑み返せば、腹の中がどくりと痙攣する。がくがく震える脚は担がれ、さらに激しくなった攻めに、元親は強く唇を噛みしめた。
脳内が真っ白に染まる。
ごぽりと内側から濡れていく感触がした。
黒こげになった鍋を覗き込んで、バスタオルを頭から被った元親は項垂れる。シャワーを浴び、着替えも済ませた政宗は隣でその様子を見守った。
「ごーはーんー…」
きゅるる。切ない声で元親の腹の虫が鳴く。
「なぁ政宗、腹減ってねぇ?」
「減ったな。なんか頼むか」
「ええー」
政宗、作らねぇの?
すっかりご飯の仕度を放棄した元親の言葉に、肩を竦めてみせる。
「なに食いたいんだ」
「政宗が作るんだったらなんでも!」
かわいいかわいい俺だけのペット。
今日も君のために美味しい飯を御馳走しよう。
(2007/10/14)
友人から「きみはペ○ト」借りて湧いたネタ。
ただ単にチカをペット、政宗をご主人様と呼びたかっただけとも言える(笑顔)
最近エロいのしか書いていないような気がしてきた。実に正直です。