ネコがかおを洗うワケ


*学園設定ですがこのシリーズだけ伊達が生徒、元親が教師となっています。
 尚、CPは変わらず伊達チカです。









 わざと押し込めるように政宗が腰をゆっくりと動かせば、目の前の股と腹の筋肉が目に見えて震え、顔の右半分を床に沈め両腕で覆った元親はまるで泣く直前の声を短く繰り返した。引きつった呼吸についていけない身体が、がくがくと揺すられるまま悲鳴をあげる。
 誤魔化しきれない熱を持った元親の下半身へ手を伸ばしたが、指が掠めるだけで背は跳ね、ぶわり、と白い肌に汗が浮かんだ。
「ね。顔、見せて」
「…いっ、やだよ。ものすっげぇ、ひどい自覚あるから…」
 どうにか指の間から対の目を覗かせて、元親が答えた。
 政宗は、抵抗する彼の腕を無理矢理捉えようとする。擦れる結合部からとろみのある白濁が元親の尻を伝って零れ、ふたりはほぼ同時にか細い息を吐いた。合わせた互いの額には流れるほど汗が滲んでいる。
 元親はいつものように、政宗の欠けた右目に鼻と頬をやさしく擦りつけた。病院や保健室でよく嗅ぐ消毒液と、なんとも例えにくいが汗が凝縮したような匂いがする。直接尋ねて確かめたことはないが、こんな振る舞いを許されているのは自分だけだろう。元親は、不快なのか心地良いのか、判別しがたい表情を浮かべる政宗の顔を、間近にしながら思った。熱いくらいの舌で右の目尻を舐めると、くく、とくすぐったげな笑いが漏れて聞こえる。
「元親。イく時、目閉じんなよ」
「無理言うなって…目ン玉飛び出たらどうする?」
 半ば真剣に訴えた元親を、少々横暴な年下の恋人は笑い飛ばした。
「そしたらめでたくお揃いだ」



 適当に身支度を済ませ、ゴミ箱に消えるティッシュの山。投げやりなフォームで政宗の手から離れた屑は、縁に何度か当たりながら底へと転がった。
 ナイッショ。ばしばし、と元親が大げさに拍手する。
 照れますなぁ。珍しく冗談に乗り、声援へ応えて腕を上げた政宗が、そのまま寝転がり元親の腿に頭を預けた。ずっと見上げてくるものだから、思わず乱れた髪を梳く。何故か、政宗と実家にいる愛猫の姿が被った。彼、“長老”は高齢猫で、縁側の日当たりが良い場所を陣取ってはずっと眠っているそうだ。抜け毛も目立つらしい。最後に抱いてから、6年は経つ。
 さっき、終わって抜きながら気が付いたんだけど。
 ピロートークにしてはあからさまな物言いだ。しかし、口にした政宗自身も元親も、そういった雰囲気を積極的に重んじる性分ではなかった。
「すっげ色っぽく顔歪めるよな。突っ込むときもそうなの?」
「知らね。…そんなに見たいなら、尻貸せよ」
「だよなぁ。それが一番確実だもんな」
 てっきり即答で断られると思っていた元親は目を丸くし、沈黙してしまう。言外に含まれた意味を察した政宗が、伸ばした足の爪先を揺らした。
「本気で抵抗されて、嫌がられたなら俺が尻を出すのもやむなし。…なんて考えてたけど、今はナシ」
 髪を撫でる元親の手を取り、その内の一本、人差し指をひと舐めする。
「アンタの中が最高」
 だからもう一回。
 身体を反転させ、全体重を掛けられるといくら体格の恵まれた元親でも背を付けるしかない。乗り上げてくる政宗の、ごそごそとまさぐる手つきにうっかり息を張りつめた。








 お揃いよりも、俺ので良かったらあげたいんだけどな。ものすごい形相で怒って、戻されるのがオチだろう。
 記憶の中の長老が、でかい欠伸をしながら鳴く。















(2007/02/09)
タイトルに深い意味はありません。ただの語感です。
無性にムラムラしたのでえっちぃの書こうかと思ったら途中で恥ずかしくなったんですって!
長く貼っていた絆創膏を剥がした時の匂い(そんな嫌いじゃない)と、長曾我部一家のネーミングセンスを思いついたら止まりませんでした。