あなたとすごしたい休日
*学園設定ですがこのシリーズだけ伊達が生徒、元親が教師となっています。
尚、CPは変わらず伊達チカです。
心地の良い目覚めだった。元親は彷徨わせた腕で、隣の温かな塊を抱き寄せる。ううん、とぐずった声に思わず噴き出した。
寝てるときくらい、こっちのわがまま聞けよな。
鬱陶しいとでもいうような素振りを見せる政宗に、苦笑をこぼす。狭い布団で目を覚ますことには、既に慣れてしまった。元から一人用に準備したものだから、一緒に使うにはどうしても丈が足りない。しかし二人とも、新しいものと買い替えようとは言い出さなかった。否、抱き合って眠ることが当たり前すぎてつい最近まで思いつかなかった。
こうして他人の温もりを感じることに、心の底では飢えていたのかもしれないと元親は思う。
辿り着いた細い指先をするりと撫で、自身のそれを巻き付けた。微かに握り返してくる感触に頬擦りで答える。遠慮無く、誰かに触れられることが嬉しかった。
文字通り、目と鼻の先にある政宗の閉じられた瞼が震え始める。それでも触れるのをやめられなかった。元親は空いた手で瞼と頬と唇とを愛撫していく。二、三度ゆっくりと瞬きした後、政宗は薄目を開けた。元親がやさしく笑む。
「…びびった、いきなり目の前で」
「はは。おはよ」
布団から出した腕を天井へ向けて目一杯伸ばし、政宗は凝り固まった窮屈な体をほぐした。それは重力に抗わずぼすんと音を立てて元親の上へ落ちる。たかが腕一本でも寝ぼけた人間のものは重い。
「おら、寒いだろ。ちゃんと仕舞え」
元親は甲斐甲斐しく掛け布団の端を持ち上げ、掛け直す。
首元へ鼻先を埋める政宗の、細い髪の毛が顎を擽った。少し冷えた小さめの肩口へ腕を回せば、元親の背に温かな掌が添えられる。指の先まで温まっているのは、政宗には珍しいことだった。
「なぁ。まだ寝るのか」
「んん」
「俺、そろそろ布団から出るけど」
言ったが早いか、回された政宗の腕に力がこもる。予想通りの行動に、元親は苦笑を禁じ得ない。もちろん限度はあるが、こうやって完全に起き出すまで共に過ごす時間が好きだった。
「アンタとならいつまでだってこうしていられる」
「はいはい」
「満更でもないくせに」
「…はいはい、そうだよその通りだよ」
諦めた吐息を漏らし、元親は居心地を直す。
満足げに笑んで再び瞼を下ろした政宗を抱き締め、倣って鼻腔を彼の薫りで満たすことにした。
(2008/03/02)
日頃の感謝を詰めに詰めまくって翔さんに捧げます!一周年とお誕生日おめでとうございます!(遅すぎる)
たまらなくらぶらぶいちゃいちゃさせたくてやった。後悔はしていない。