プリーズ、マイラヴァー
*学園設定ですがこのシリーズだけ伊達が生徒、元親が教師となっています。
尚、CPは変わらず伊達チカです。
連休の第一日目。気まぐれな政宗の思いつきに乗じて、元親は最寄りの海岸へ向け車を走らせていた。
出発してから、そろそろ1時間半経つ。
持ち寄ったアルバムの2枚目を聞き終えた頃だった。
緩いカーブを抜けると地平線はあっという間に青く染まり、そこに浮かんだ小さな小さな船の姿を見つけ、海だ、と今更、助手席の政宗が身を乗り出して呟く。ハンドルを握りながら、ちらりと視線をやった元親も、少しずつ高揚してくる気持ちを隠せない。
車は適当にあった駐車場へ止めた。重いドアを開け、外へ出ると腰まである丸太の柵に寄りかかり、政宗は一瞬考えた後、軽やかに足を揃え飛び越える。キーを器用に弄ぶ元親は、さっさと脇の小道で下った。
「こっちで働きだしてから、来る機会もなかったからな…」
たった2,3歩、歩いただけでスニーカーの中は砂粒で一杯になる。ふたりは片足立ちでふらつきながら苦心して脱ぎ、改めてそっと素足で細かい粒を踏みしめた。
あったけぇ。靴の底をたたき合わせて、元親は笑う。
「…海を見ると、叫びたくならね?」
寄せてくる冷たい波が、爪先から踝までを撫でていった。わざと飛沫の立つように足を振り上げた、政宗が尋ねる。
「たとえば?」
にやり。元親は、目の前で彼の口元が持ち上がったのに、背筋が薄ら寒くなるのを感じた。
「センセーのていそーちょうだー…!!」
一瞬、白目を剥いて言葉を失った様子には少々やりすぎたかと考えたが、相手は政宗だ、それくらい許されるだろう。大慌てで力加減を忘れた元親は隣の後頭部を平手で殴り、ぐらりと傾いたところを羽交い締めにし、不穏なことをほざく口を塞いだ。引きずりながら辺りを見回せば、さすがに季節を外しているため人影は疎らなもののだったが、元親は今にも顔から火が噴き出しそうに感じた。
「馬鹿野郎…!!おま、ナニ言ったか、ちょ、そこに直れェっ!」
「あーやべ、本当に星が飛んでた…。それならこの手、離してくれよ」
あっさりと自由の身になった政宗は素早く、いきり立つ元親の唇を掠めとる。再び、にやり、と笑ってみせたが、肩を怒らせた元親が足払いをかけると、情けなく砂浜に転がりあえなく、全身砂まみれになってしまった。
「口に入ったっ!アンタ、興奮しすぎ!」
「ホントに、そこへ直れェっ!!俺が直々に躾してやるからよ!」
(2007/04/23)
翔さんにコレを捧げるって言ったら、怒られるのかしら…ドキドキ…!(笑)