*誕生日プレゼントとしていただきました!感激!





大会の後で、珍しく部活がなかった放課後、政宗は愛しの先輩から、放課後デートをしようと言われた。
「今日はおれのおごりな!」
とそういってつれてこられた、学校からは二駅ほど離れたゲームセンター。
日ごろ、政宗があまりなじみのない場所ではあったが、元親はよく来るということは知っていた。
何せ、元親の趣味は基本どこまでも、ちょっと違った意味でアクティブだからだ。
格闘技観戦だけにとどまらず、自らもさまざまな格闘技を身に着けている彼は、ゲームセンターなどのパンチングマシーンや、レーシングゲーム、シューティングゲームといったアーケードゲームを趣味としている男なのだ。
お前は運動神経いいし、目だっていいから、すぐにコツつかむと思うぜと、おだてられれば、政宗としてはいそいそと元親とともにレーシングゲームの椅子に座り、シューティング用のガンを持つしかない。
確かに実際やってみれば、動体視力のよさや、培われた勘といったものの助けもあって、政宗はだいたいのコツはつかむことができた。
特にシューティング系のゲームは、元親とともにランキングに乗るほどのスコアをたたきだしもした。
さてつぎは何をしようかと話しながら、元親はポケットに手を入れて、あ、と声を上げた。
「どうかしたんすか?」
「やっべ、もう小銭がねえわ。ちょっと両替してくっから、適当に見繕っといてくれよ」
「小銭ならまだおれが」
持ってますからと続けようとしたところ、ダーメと元親の声にさえぎられる。
「昨日お前が勝ったお祝いなんだから、今日はおれにおごらせろよ」
そう笑顔で宥めるように言われ、政宗はむずがゆいような照れくささに襲われた。
元親は政宗の試合にはいつも応援に来てくれる。
それだけで自分は十分に報われているというのに。
政宗の勝ちを、自分のことのように喜んで、祝ってくれるということが、照れくさくて。
けれどうれしくてたまらなかった。
少し赤くなった顔を伏せて、政宗はじゃあ今日は先輩に甘えますと答えた。
元親は上機嫌で少し胸をそらして笑った。
「おう、先輩にどーんと甘えとけ!」
そういって、元親は両替のために店の奥へと歩いていった。
さて、適当に見繕っておいてと言われたが、政宗はゲームセンターという場所には不慣れなのである。
どこにどんなゲームが置いてあるのかもわからないし、あんまりうろうろして、元親に探す手間をかけさせるのも悪い。
そんなことを考えながらも、なぜか政宗の足はとある方向へと向かっていた。
どこへ、といえば。
クレーンゲームのコーナーである。
店の入り口付近から連なっているこのブース。
実は、入ったときから気になってしかたなかったのだ。
政宗はとある一台の前で足を止めた。
ガラスの中に鎮座しているぬいぐるみたち。
特に、この白黒のブタちゃんたちが!!
元親につれられて中に入っていくときに、視界の端でとらえ、思わず足を止めそうになったぬいぐるみである。
手触りのよさそうなふわふわした生地。
つぶらな瞳。
そして、足がちょこんとついたその丸みを帯びたフォルム!


本当に可愛い。


思わずうっとりしてしまった政宗だ。
ほかにも可愛らしいキャラクターのぬいぐるみはあるようだが、政宗の中にずばっと切り込んできたのは、この白黒のブタちゃんたちなのだ。
是非とも一匹、いやセットでつれて帰りたい。
しかし、政宗はクレーンゲームの経験など皆無である。
自分の腕で、手に入れることは無理だろう。
分かってはいたが、それでも、と未練が残る。
眉間にかすかにしわを寄せて、クレーンゲームの前で苦悩しているその顔は美しく、後ろを通る中学生たちが控えめな黄色い声を上げていたが、政宗はもちろん、気づかなかった。
と、そこへ。
「何だ政宗、こいつが欲しいのか?」
「!先輩?!」
ひょこりと、政宗の肩口から顔をのぞかせて、元親が同じくガラスの中を見ていた。
元親は政宗が可愛いものを好むことを知っているが、それでもやはり心臓に悪いなと政宗は思った。
ただ、だからといって隠すこともなく、政宗は苦笑してはいと頷いた。
普段は己の乙女趣味はひた隠しにしているが、元親は政宗の趣味を知っている数少ない人である。
いまさら隠す必要はなかったし、何より大切な恋人に隠し事はしたくない。
ふーんと頷いたあと、元親は政宗の方へ顔を向けて、にやりと笑った。
「とってやろうか?」
「とれるんですか?!」
「おうよ!ま、見てな」
元親はゲーム台に100円硬貨をいれた。
政宗はクレーンの動きを固唾を呑んで見守った。
クレーンのアームが、黒ブタちゃんの胴体の下にさしこまれる。
果たして、ブタちゃんを捕まえることができるのだろうか。
元親のことは信用していたが、それでも緊張することをとめられず、政宗は思わず手に汗を握っていた。
そして、みごと持ち上げられたブタちゃんが、所定の場所まで運ばれ、アームが開き落ちてくる。
「おっしゃ、完璧!」
元親はしゃがみこんで、取り出し口から戦利品を引っ張り出した。
ほらよと、差し出されたブタちゃんを受け取って、政宗はちょいと感動していた。
爽やかな笑顔で、次は白いのとってやるからな!ともう一度台に向かう元親の姿に。
「・・・先輩」
思わずきゅんときて、手渡されたブタちゃんを胸の前で抱きしめてしまった政宗である。
元親はそのあと、言葉通りに白ブタちゃんも見事、政宗に手渡してくれた。
「一発でとるなんて、すごいっすね、先輩」
心底感心していえば、元親は照れたのかはにかむように笑った。
「まあ、こんくらいわな」
元親の笑顔がまた可愛らしくて、政宗は二重の意味でありがとうございますと礼を言った。
そのあと、何台かゲームを楽しんで、帰途に着いた。
元親はゲームセンターの大きなロゴが入った袋をもらってきてくれて、その中に、白黒ブタちゃんを入れて政宗に渡してくれた。
その気遣いがうれしい。
「おれは料理とかできねえからよ、こういうのくらいしか思いつかなかったけど、お祝いになったか?」
駅で別れる際、最後に少しばかり自信がなさそうにそう問われ。
なんだか温かいものが胸にあふれて、政宗は破顔した。
「楽しかったし、嬉しかったです、先輩」
ほっとしたように、そっかと元親は息をこぼした。
ここが駅ではなかったら、抱きしめてありがとうといいたかったのだが、ここは駅で、周りに人がたくさんいるので。
かわりに政宗は元親の耳元に唇を寄せて。
「Thank you, my dear」
また明日と笑ってみせれば、どうしてか、元親の顔が真っ赤になっていて。
どうしたのだろうと首を傾げれば、普通に言えよ馬鹿野郎!と怒られてしまった。

















いつもお世話になっている翔さんからいただきました!!
本当、可愛らしい!「ダーメ」って言うアニキとか「きゅん」としちゃう伊達とか!ごちそうさまでした(ばたり)放課後のゲーセンデートは最早ふたりの定番になればいいですね。そして実は我が家にも白黒ブタちゃんいたりします(笑)
私なんかの誕生日のためにこんな素敵なものを…!一生大事にします!
翔さんありがとうございましたー!!